ザ・ノンフィクション
「私のママが決めたこと〜命と向き合った家族の記録〜」
スイスに到着したマユミさん(44)は、夫と二人で最初で最後のスイス観光を行う。
建築学科を卒業しているマユミさんには、スイスの街並みが非常に興味深く映った。
そして、安楽死が行われる日、ホテルからその施設に向かう車の中。その中のマユミさんの表情が、そのドキュメンタリー番組の中で放映されていた。
少し青ざめたような顔で、車の外の景色を黙って見つめている。
彼女は何を思いながら、その窓の外の街並みを見ていたのだろうか。
そんなことをどうしても考えてしまう。
それが人生で最後の日だった。
自分にはもう二度とこの景色を見ることができない。
そのことをどのようにして自分の中で折り合いをつけていたのだろうか。
単純に不思議だった。
きっとそれは、その状況に立った人にしか分からない感情なのだと思う。
「自分にはもう二度と“明日”という日は訪れない」
今私が自分にそう言い聞かせてみても、きっと明日はやってくるし、明後日もやってくる。
だけど、一つだけ確かなことがある。
それは、
「自分にはもう二度と“明日”という日は訪れない」
この言葉が真実になる日が、いつか必ず訪れるということ。
その日に、私は何を思うのだろうか。