ある人のFIRE日記

日々思ったことを書いていくだけのブログ

安楽死することを選択した、ある女性について(4)

 

ザ・ノンフィクション

「私のママが決めたこと〜命と向き合った家族の記録〜」

 

 

 

安楽死が行われる日、それが行われる場所に到着したマユミさんとその夫は、ある一室に通される。

マユミさんはその部屋に置かれたベッドに横になり、傍の椅子には夫が座る。

 

 

 

そこで、家族最後の時間を過ごすということで、取材班や施設関係者が全員一度部屋を出た。

マユミさん、夫、そして日本に残してきた二人の娘とはテレビ電話を繋いだ。

だけど、一時間を過ぎてもその部屋から夫が出てくることはなかった。

 

もしかしたら、家族と会話をすることで、マユミさんの安楽死に対する意思が鈍ってしまったのではないのか。

関係者が、マユミさんと夫を残してきた部屋のドアの前に行き、ノックする。そしてドアを開けて中の様子を確認すると、まだ家族で最後の会話をしているところだった。

 

関係者がマユミさんに、

「今日は安楽死をしない、という選択肢もあります」

と告げる。

 

だけど、マユミさんは安楽死をする意思を示す。

 

 

 

最後の時間が近づいていた。

 

医師が、マユミさんが横になるベッドの傍に座り、マユミさんに言葉をかける。

「もう一度聞きますが、あなたは本当に死を望んでいるのですね?」

 

最後の意思確認だった。

 

マユミさんは一言「YES(はい)」と答える。

 

医師はマユミさんに、点滴のチューブに設置されたバルブを手渡す。

 

そのチューブはマユミさんの手に繋がれ、そのバルブを開けることによって薬剤がマユミさんに投与される。つまり、マユミさんが亡くなるということを意味していた。

 

「死を望む気持ちが確かなら、この点滴を開けていいですよ」

 

医師は告げた。

 

 

 

つまり、自分自身でそのバルブを開けなければならないということだった。

安楽死とはいえ、その最後のアクションは自分自身でとる必要があるということだった。

 

 

マユミさんは、傍に座る夫に、

 

「『ママ、スイスに行っていいよ』って言ってくれて、ありがとう」

 

と感謝の言葉を告げてから、自分でそのバルブを回した。

 

 

 

 

 

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