1990年に発生した「足利事件」。
「殺人犯はそこにいる」の著者である清水潔氏は、取材の中でその事件の真犯人(と思われる人物)を突き止めたという。
その情報を警察にも流したのだけど、結局それでも警察は動くことはなかった。
なぜ警察は動かなかったのか。
そして、なぜ警察は動けなかったのか。
それは、足利事件の2年後に発生した「飯塚事件」が大きく関係していた。
飯塚事件は1992年2月20日に福岡県飯塚市で発生した殺人事件で、小学1年生の女児二人が犠牲になった。
犯人とされる久間三千年(みちとし)という男が1994年に逮捕される。久間は逮捕前から冤罪を主張していたが、2006年に死刑が確定する。
そして2008年に死刑が執行された。
その飯塚事件でも、足利事件で実施されたDNA鑑定法と同じ方法(MCT118法)が実施され、久間のDNA型と遺留物から検出されたものとが一致した。
そしてその結果が重要な証拠の一つとなって、死刑判決につながっていた。
だけど、足利事件ではその「MCT118法」は精度の低い不完全なDNA鑑定法とされ、最新の方法で再度DNA鑑定を行った結果、その鑑定結果がひっくり返ってしまったのだ。
著者の清水氏はこの「飯塚事件」についても色々と取材を行っている。
そしてその中で、やはりこの事件についても冤罪の可能性が拭えないと述べている。
それは、死刑判決を受けた久間に対して、すでに死刑が執行されてしまっているのだ。
「飯塚事件でも、DNA鑑定が間違っていました」では絶対に済まされなかった。
足利事件を再捜査してしまうと当然、当時の「MCT118法」というDNA鑑定法がクローズアップされることになる。それは、飯塚事件の闇にクローズアップされるということでもあった。
警察は、それだけは絶対に防ぐ必要があったのではないか、と清水氏は推測する。
だから警察は、清水氏が真犯人の情報を流したとしても動くことがなかったのではと。
それが、この本のタイトルである「殺人犯はそこにいる」につながる。