中途入社者の全体研修は、朝８時３０分に開始された。
始めに入社式が行われる。
入社式といっても、人事部門の担当者がその会議室にやってきて、その場で入社辞令が各中途入社者に手渡されるだけだ。そして形式的なその入社式が終わると、企業Bの会社全体に関わるような基本事項についての説明が「研修」という形で順番に行われた。
企業理念と行動指針。
就業規則説明。
人事制度説明。
中途入社者は私を入れて６人。
様々な年齢層の人間がその会議室にはいたのだけど、皆、今日が転職初日であるということは同じだった。
ある者は新しい会社に希望を持ってこの場にいるのかもしれない。また、ある者は前の会社から逃げるようにしてこの場にいるのかもしれない。その時の私のように。ただ、この全体研修が終われば、それぞれの配属先に散って、明日から働き続けなければならないのだ。
当然、私たちはその説明を真剣に聞いていた。
それらの説明が終わった段階で、初日の午前中が終わった。
人事担当に案内されて、私たちは本社内に設けられている社内食堂に向かった。企業Bの中で食べる、初めての社食だった。
私たち６人は、なんとなく同じテーブルでその昼食を食べた。
その日初めて顔を合わせた６人。会話が弾むということもなかったのだけど、それでも、どこに配属されるかなどお互いのこと話していた。私は、その本社から電車で３０分ほど行ったところにあるY事業所に配属されることを簡単に話した。
午後の研修も、会社に関する様々な事項について、それぞれの部門の担当者が会議室にやってきて私たちに説明をしてくれた。
セキュリティについて。
入社手続き。
職務発明等の取り扱い。
企業Bにおけるコンプライアンス活動。
安全衛生教育。
それらの説明は午後三時ころまで続けられた。
