転職先の企業Bにおける初出勤日は、2018年9月3日、月曜日だった。
出社先は企業Bの本社。
そこで中途採用者の全体研修が行われることになっていた。
朝、通勤電車に乗って、その本社の最寄駅に向かう。
駅を降りると、企業Bの社員の人たちなのだろう、駅から本社のある方向に歩いていく人の列ができていた。私はその列の中に紛れるようにして歩きはじめる。
出社初日は当然、まだ社員証は持っていない。
企業Bの社員が正門のゲートに社員証をかざして中に入っていくのに対して、私は正門の隣に設けられている受付に向かった。そして
「九月一日に入社した◯◯です」
と告げた。受付にはすでに中途採用者の話はいっているようで、受付の担当者はリストを見ながら私の名前を確認して、臨時の通行証を差し出してきた。
企業Bの本社では、広い敷地の中にいくつかのビルが隣接するように立っていた。
「中途採用の全体研修が行われるのは◯棟だったはず・・・」
私は事前に案内として送られてきた書類を頭に思い浮かべながら、その研修が行われる棟を目指した。
その棟は敷地の隅に設けられた、すこし年季の入った建物だった。ちょっとした研修用の建物になっているようだった。
私はその建物の中に入る。
そして案内に記載されている階に上がる。
エレベーターを降りると、
「中途採用者全体研修」
という貼り紙が、ある一室の前に張り出されていた。そしてその部屋の前には小さな机が置かれていた。
私がその机の前に立つと、机の上には一枚の紙が置かれている。どうやらこれが出席簿になるようだ。私は自分の名前の横に丸印をつけてから部屋の中に入った。
その部屋には、すでに何人かの人たちが席についていた。
確か、私も入れて六人だった気がする。
彼らは全て私と同じように2018年、九月一日付で企業Bに中途入社した人たちだった。中途入社した私には、もはや同期と呼べる人たちはこの会社にはいない。だけど、ある意味では彼らが私にとっての新しい同期でもあった。
彼らは皆、きっちりと上下のスーツを着ていた。
半袖のYシャツ姿だったのは、私だけだった。