ある人のFIRE日記

日々思ったことを書いていくだけのブログ

とても暑かった2018年の夏(2)

 

会社を辞める私への送別会の帰り、私は最寄駅から自分の家まで歩いて帰っていた。

 

 

 

途中、私が務める事業所の入り口の前を通る。

 

その時だった。

事業所前の歩道を歩いてくる一人の人影があった。事業所から駅に向かって歩いている。あたりは街灯も薄暗くそれが誰かはわからなかったのだけど、私とは逆方向に歩くその影はどんどん私に近づいてくる。

 

 

 

その人影は、私の同期だった。

 

夜は21時近かったのだけど、それまで仕事をしていて今から家に帰るのだろう。

 

彼は、少し前に私も担当として加わっていた製品Oに同じく担当として参加していて、その時に初めて一緒に仕事をしたことがあった。私よりも階級は上になっていて、管理職待遇になっていた。そして製品の主要ユニットの開発リーダーを担っていた。

 

その製品O開発で一緒になる前は特に仕事で絡むこともなかったし、そして同期とは言えプライベートでの付き合いがある訳でもなかった。

 

 

 

 

彼も私のことに気付いたようだった。

 

彼は私の前で立ち止まり、

「今日で最後だっけ?」

と訊いてきた。

 

「うん、そう」

私は短く答える。

 

すると彼は右手を前に差し出してきた。

私は一瞬その右手の意味がわからなくて、彼を見ていた。どうやらその右手は私に握手を求めているのだと気付いて、私も右手を出して彼の右手を握った。

 

私は同期である彼と握手をしていた。

新卒で長年その企業Aで働き続けていたけど、同期と握手をしたのが彼が最初で最後だった。

 

 

その場で簡単に言葉を交わして、私たちは別れた。

私は決して振り返らなかった。

 

きっと彼も振り返ることはなかったのだと思う。

 

 

 

私と彼、もう進もうとしている道が違っていた。

 

 

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ FIREへ
にほんブログ村

FIRE(早期リタイア)ランキング
FIRE(早期リタイア)ランキング