松屋で買うものはいつも決まっていた。
牛めし並盛りと温泉卵。
牛めし並盛りは値段も安かったので、基本的にはそのメニューを頼んでいた。ただ、それだけではさすがに物足りない。なのでサイドメニューとして温泉卵をつける。その温泉卵が日によってはお新香の日もあった。それは完全に気分によるもので、
「野菜も少し食べたいな」
と思った日はお新香を食べることが多かった。
サイドメニューとして卵や野菜(お新香)をつければ、最低限の栄養バランスは確保できるだろう。
そんな打算も頭の片隅にはあった。
だけど、どうしてもがっつりと食べたい、という日も中にはある。そんな日はカツカレーを食べた。
私がよく通っていた駅前の松屋は、松屋とマイカリー食堂が併設された店舗になっていたので、マイカリー食堂のメニューも頼むことができる。
マイカリー食堂のロースカツカレーが特に私のお気に入りだった。
牛めし並盛りが400円。ロースカツカレーが690円。
当然、ロースカツカレーの方がだいぶ高い。
それでも、時々はそのロースカツカレーを食べていた。
その当時、私は、毎日のように夜遅くまで会社で残業していた。
21時半に会社を出て、最寄り駅に着くのは22時頃になる。
会社からの帰りにそのロースカツカレーを食べること自体が、一種のストレス解消法だった。
どうせだったらおいしいものをいっぱい食べたかった。
それに、
「そもそもこんなに働いてお金を稼いでいるのだから、このくらいはお金を使ってもいいだろう」
そんな開き直りもどこかにはあった。