歯医者の予約日は9月4日(水)の午後5時半からだった。
その歯医者は駅前の市立図書館のすぐ近くにあったので、歯医者に行く前に図書館に行ってその日の新聞でも読もうかなとも思ったのだけど、変に読むのに集中して歯医者に遅れてしまったら元も子もない。
私は家から直接その歯医者に行くことにした。
午後5時に家を出て、駅前を通って歯医者に向かう。
その歯医者は駅の近くの小さな商業ビルの二階に入っていた。その階段を登っていると、
「前回、この階段を登ったのはいつだろう」
ということが気になった。
最近は歯医者に行っていなかったので、もう二年以上は前のことかも知れない。
また、この階段を登ることになるのか……。
虫歯になってしまうと時間的コスト、金銭的コストが多大に掛かってしまうので歯にはできるだけケアをしてきたつもりだったけど、またこの階段を登っている自分がいる。
歯の健康のためにさらにどのようなケアをすればいいのだろう。
そんなことを考えていた。
ビル二階のちょっとした通路を行くと、その歯医者の入口が見えてきた。
中に入る前に財布から、診察券とマイナンバーカードを出しておく。
そして中に入ると、待合の椅子には治療待ちの患者は一人も座っていない。歯医者の受付にも人が誰もいない。私はその入口の前で、人が出てくるのを待っていた。
いつもは歯科助士の女性が受付に出てくるのだが、その日は歯科医師が直接受付に出てきた。受付から見える診察室には、他の人は誰も見えない。歯科医師一人しか、そのときは医院の中にはいなそうだった。
まさか、歯科医師がワンオペレーションをしているのだろうか。
そもそも治療の際は歯科助士の手も必要となるはずだけど、大丈夫なのだろうか。
そんなことを気にしながら、受付の歯科医師に診察券を手渡した。