診察室では、30代半ばくらいの若い男性医師が机に置かれたディスプレイの前に座っていた。
「お願いします」
と言ってから、その医師の前に置かれた椅子に座る。私とその医師との間には、コロナ対策なのだろう透明シートが貼られていた。
「◯が腫れているということですね」
私が事前に書いた問診票を見ながら、医師はそのように尋ねてくる。
私は「はい」と言って、その後の医師の出方を待った。
「検査結果では特に感染症も出てこなくて、きれいな結果になっていました。それでは超音波で見てみますので、こちらに横になって下さい」
机の背後に置かれた寝台に指し示す。
私は持っていたカバンをその寝台の横に設けられているカゴに入れて、その寝台に横になった。寝台の頭側には、超音波検査用なのだろう、ちょっとした機器が設置されている。
「なるほど」
医師が私の腫れている患部にその機器の端末を押し当て、そして横目で機器に設置されているモニターを見る。
「分かりました」
医師は端末を私の体から離す。
「では、こちらの椅子にお戻り下さい」
私は寝台から降り、再び先ほど座っていた椅子に戻る。
「ほぼほぼ間違いないと思いますが、◯◯(病名)だと思います」
医師が私の症状について説明する。
「人間の体内には水があって、その水が溜まっています。ガンとかではないので安心して下さい」
私はその言葉を聞いて、心の底からホッとしていた。
良かった。
それまでの数日は最悪の事態ばかりを想像していたので、本当に膝から崩れ落ちるほどホッとしていた。
「治療するには手術しか無いのですが……」
医師が机の上のディスプレイを見る。
「最短で空いているのが9月上旬になります」
「9月……」
「まあ、今決めないでも、来週の診察時にこの件については話しをしましょう。来週30日、午前10時にお越し下さい」
「はい」
医師は最後に
「ただ診察を確定したいので、本日CT検査を受けて下さい」
と言った。