最近、一冊の本を読んだ。
『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』
高橋ユキ著
2013年に山口県の限界集落で実際に発生した、ある殺人事件についてのノンフィクションとなっていて、本紹介には次のように書かれている。
『2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。
犯人の家に貼られた川柳は〈戦慄の犯行予告〉として世間を騒がせたが……
それらはすべて〈うわさ話〉に過ぎなかった。
気鋭のノンフィクションライターが、ネットとマスコミによって拡散された〈うわさ話〉を一歩ずつ、
ひとつずつ地道に足でつぶし、閉ざされた村をゆく。
〈山口連続殺人放火事件〉の真相解明に挑んだ新世代〈調査ノンフィクション〉に、震えが止まらない!』
この事件の犯人となる『ワタル』はもともとこの集落の出身だったのだが、若い時に地元を離れて東京に出る。
東京で40歳過ぎまで日雇いのような仕事をして暮らし、ある程度の資金が貯まった段階で、その集落に戻ることを決める。その集落では年老いた両親がまだ暮らしていた。
ある意味ではUターンのようなものなのかもしれない。
だけど、その集落は地元民の間で様々な『うわさ話』が行き交うような、それこそ田舎特有の『人間関係の濃さ』が支配するような場所だった。
もともと『ワタル』の両親も、その地元の人達とうまくやっていくことが出来ていないような状況の中で、40歳を過ぎてその集落に戻ってきた『ワタル』が、その場所に馴染めるわけがなかった。
『ワタル』はその集落でどんどん孤立していき、その両親が亡くなって家に自分一人しかいなくなってしまうと、その孤立は拍車をかけて深くなっていった。