会社員時代、私は「お菓子」というものをよく食べる人間だった。
お菓子の中で特にチョコレートが好きだった。
かと言って、家で食べるわけではない。会社の居室で食べるのだ。
その当時の私にとって、仕事の合間に加糖飲料(缶コーヒー)と菓子(チョコレート)を食べることが、唯一と言ってもいいくらいのストレス対処法だった。
目の前の緊張を強いられる仕事を一つ終えると、自分へのご褒美として缶コーヒーとチョコレートを買う。そして次の「ご褒美」を人参にして、次の仕事に取り掛かる。そのようにして、私は自分が好きにもなれない仕事、自分に向いているとも思えない仕事に自分を追い立てる。そうでもしていないと、朝早くから夜遅くまで続く「仕事」をこなすことができなかった。
居室の横には自販機が置かれており、そこは私の行きつけの場所になっていた。
お金のことなんて全く気にしなかった。
「嫌な思いをして働いているんだ。このくらいのご褒美を自分に与えてもいいだろう」
そう自分に言い聞かせると、それに対して反論する思いは自分の中からすぐに掻き消される。
唯一気になったのは、自分の歯についての健康だった。
継続的に歯を加糖飲料に晒し続けることは、どう考えても歯には良くはない。そのことは痛いくらいに分かっていた。ただ、その思いも「ストレスに対処するためだ」という言い訳の中ですぐに力を失っていった。そのくらい、その当時の私は自分で自分をコントロールすることができなくなっていたのだと思う。
居室から少し歩くと、食堂の横に小さな売店が設けられていた。
種類はそれほど多くはなかったが、軽食や飲料が売られている。
勤務時間中でもその売店は営業を続けており、営業時間内であれば自由に物を買うことができた。
その売店も私の行きつけの場所だった。
私はその売店によく行き、そしてチョコレートをよく買っていた。
