鳥取の父の実家には、家に大きな神棚と仏壇がある。
今回実家を取り壊して売却するにあたって、神棚と仏壇もきちんと処理する必要があった。
私自身あまり詳しくはないのだが、神棚に関しては近くの神社から神主に来てもらって、魂抜きと焚き上げをする。つまり神棚に祀られた神様をその神棚から抜き出し、そしてその抜け殻となった神棚を神社で焼いてもらうのだ。
その魂抜きは11月13日に行った。
実家の近くのK神社に朝10時に車で向かい、神主を迎えに行く。その神社は実家から歩いて行ける距離にあったのだけど、魂抜きをするにあたって色々な道具を神社から実家に運ばなければならず、それを車に乗せるとのことだった。
私の両親が車で神社に向かい、私は家で留守番になった。
しばらく待っていると車が戻ってきた音がした。
「荷物を運び入れるのを手伝ってくれ」
玄関から父の声が聞こえる。
私は玄関に向かった。
魂抜きをするための道具一式が大きなトレイにまとめて入れられていて、また、魂抜きの儀式をするための祭壇にするのか、ひどく年季の入った木製の台も玄関に運び込まれていた。
私はそれらの道具を玄関から、神棚のある居間に運び入れる。
そして神主の指示に従ってそれらを神棚の前にセットしていった。祭壇の上には2キロの米と一升瓶の酒を供えて、その儀式は始まった。神主は懐から一枚の紙を取り出し、祭壇の前で何やら祈祷を上げていく。途中、神社でよく見かけるような木の棒の先に紙が取り付けられた「祓串」を振る。私たち三人はその神主の後ろで神妙にその祈祷を聞いていた。
魂抜きの儀式は20分程で終了した。
「神棚をおろしてください」
神主の指示に従って、部屋の片隅に設けられた台から神棚を下ろす。そして事前に用意しておいた布にその神棚を包んだ。
それを持って神主はまた車に乗って神社に帰っていったのだけど、その際に、
「この家に始めて入りました」
という言葉を残していた。
確かに寺の和尚であれば、毎年夏のお盆には読経を唱えるためにその実家に訪れていたのだけど、神主がその実家に入っているのを私は見たことがなかった。